旧外地引き揚げと「就籍」を経た方の公正証書遺言作成をサポートいたしました

相続・終活

こんにちは。みたけ行政書士合同事務所の御嶽亜由美です。

本日は、「出生時までの戸籍が追跡できない」という複雑なご事情をお持ちの80代女性・A様の公正証書遺言作成の事例についてご紹介いたします。

ご相談のきっかけ:同居する長女へ自宅を遺したい

ご相談に来られたのは、80代のA様と、お母様のA様を長年支えてこられた長女のB様でした。

A様は、亡きご伴侶様とともに築き上げた大切な自宅不動産を、「最後まで自分の面倒を見てくれた長女にスムーズに引き継がせたい」という強いご希望をお持ちでした。

そこで、将来的な親族間のトラブルや法的リスクを未然に防ぎ、A様の真意を確実な形として遺すため、公正証書遺言を作成することとなりました。

相続人調査で見えた壁:旧外地からの引き揚げと出生時の戸籍の消失

A様や長女のB様、ご親族からお話をお伺いしたところ、A様は旧樺太で生まれ、その後ご家族と満州に渡り、終戦に伴う過酷な状況の中でごきょうだいを何人も亡くされ、日本へからがら引き揚げてこられたとのことでした。まさに国により運命を翻弄された、先の戦争の歴史的証人と言えましょう。

さて、公正証書遺言作成に当たっては、トラブルを未然に防ぐために、現在戸籍から出生時までの戸籍を遡って、相続人の調査をすることが通例です。


そこでA様の戸籍を現在のものから遡って取り寄せたところ、最も古いものに就籍(しゅうせき)の記載があること、ただし出生地旧樺太に関する一切の情報の記載がないこと、出生時の戸籍が失われている可能性があることが分かりました。

■ 「就籍」とは?

終戦直後の混乱や特殊な事情により、日本の戸籍簿に記載されていなかった/戸籍を失っていた方が、家庭裁判所の許可を得て新たに戸籍を編製する手続きのことです。

旧樺太の戸籍簿の多くは戦火や混乱の中で失われており、現在六村の戸籍簿・除籍簿のみが外務省に保管されています。


A様の生誕地は六村外でしたが、一縷の望みをかけて外務省への情報開示請求を検討したところ、請求の要件に必要な「旧樺太に本籍が置かれていたことが記載されている戸籍(除籍)謄本」が存在しないという壁に突き当たりました。

外務省への照会と将来の相続登記への備え

そこで当事務所では、以下の調査および請求を行いました。

  1. 歴史的資料の収集
    A様の御祖父様が旧樺太にて鉄道事業に従事されていたことから、公務員名簿に記載があるのではと推察しました。そこで昭和初期の内閣印刷局発行『職員録』を調査したところ、当時の旧樺太での御祖父様の勤務が裏付けられました。ご家族と旧樺太に居住されていたという証言が、公的資料により補強される形となりました。
  2. 外務省への公式照会
    上記立証資料とご本人様・ご親族の証言を事情説明書として整理し、外務省宛てに照会を実施しました。

外務省からは、「該当地域の戸籍は外務省に保管されておらず、開示は不可能である」「A様のご家族に関する情報も外務省には保管されていない」という回答(書面および電話回答)を得ました。

将来、A様が亡くなって相続が発生した際、法務局での相続登記(不動産の名義変更)において出生まで遡る連続した戸籍がない理由を客観的に説明できない場合、手続きが滞ってしまう恐れがありましたが、「取得できる限りの客観的資料を揃え、取得不能である理由を公的機関の回答によって明確にしておく」という陣形を整えたことで、将来の相続登記手続きも視野に入れた万全の備えを構築することができました。

人生の重みとお子様達への想いを込めた「付言」

戸籍問題の調査・整理と並行して、公証人と密に連携を取りながら遺言書原案の作成を進めました。

将来の不要な紛争を防ぐための法的な条文設計はもちろんですが、遺言書の最後に添えた「付言事項(ご家族へのメッセージ)」にも細心の注意を払いました。

長年同居して支えてくれたB様への思い、ほかの相続人様への細やかな配慮、そして過酷な引き揚げから今日に至るまでの人生でご伴侶様と築いた財産を、争いなく将来へ繋いで欲しいという願い。
A様が歩まれた80年以上の人生の重みと、残されるご家族への想いが伝わる付言事項を、一緒におつくりいたしました。

公証役場にて遺言作成完了

事前準備を万全に整え、先日、公証役場にて無事に公正証書遺言の作成が完了いたしました。

過酷な時代を乗り越え、大切に守り抜いてこられたご自宅。それが確実にご家族へと受け継がれる仕組みが整いました。A様とB様、おふたりの晴れやかな表情を拝見でき、私も安堵いたしました。

複雑な経緯や「生きてきた証」に寄り添う遺言書作成

本件のように引き揚げ・旧外地が関わるケースは、戸籍収集困難事例として専門的な知見と根気強い調査が必要となります。

みたけ行政書士合同事務所では、将来の法的リスクを排除する厳密な実務調査と条文設計に努めるとともに、ご依頼者様のお心に寄り添い、後世に確かな想いを伝える遺言書作成をサポートしております。

「うちの家族の戸籍関係は少し複雑かもしれない」「将来の手続きで家族に苦労をかけたくない」など、遺言や相続に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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